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商品戦略~選択と集中~

商品戦略~選択と集中~

 「選択と集中」経営者なら耳にしたことのある言葉です。インターネットを用いて「選択と集中」で検索すると、その意味・その成功例や失敗例・それが正しいのか誤りなのか、様々な検索結果が出てきます。

 さて、ガソリンスタンドの現場における選択と集中について考えてみたいと思います。ガソリンスタンドは、収益性を向上させるべく、ガソリン以外の商品販売に力を入れている店舗が多いです。ガソリン以外の商品というと、どのようなものを思い浮かべますでしょうか?

 ざっと、エンジンオイル、タイヤ、バッテリー、ワイパー、ラジエター液、ファンベルト、ブレーキ部品、洗車、パンク修理、ワックスがけ、コーティング処理、車検・・・車に関するもの全てですので、挙げていたらキリがありません。

 ガソリンを入れに行ったら、お客様の都合を考えずに、これら商品をしつこく勧めてくるので、反感を買ったガソリンスタンドは少なくないと思います。そういった中で、お客様に好感を持たれ、販売実績を挙げる店舗・スタッフもいるわけです。

 かつて私の部下であったA氏がそうでした。

 当時私が勤務していたガソリンスタンドの運営会社は首都圏を中心に約40店舗を展開していました。その中で、私は比較的大規模な店舗の店長職を担っていました。その店舗規模の約4分の1程度のガソリンスタンドに勤務していたのが当時のA氏でしたが、その高い販売力を大規模な店舗で活かすべく、人事異動で私の店舗に赴任することとなりました。

 以前の店舗では1時間に1台の来店もないこともよくあるのに対し、赴任後の店舗ではお客様がひっきりなしにガソリンを入れに来ます。この状況に赴任直後のA氏は大喜びでした。「店長、こんなに客数があるのならガソリン以外の商品をお勧めするのに苦労しないですね」と目を輝かせながら私に話しかけてきたA氏の表情を今でも思い出します。

 やる気満々でテンション高く販売に邁進していたA氏なのですが、赴任して1か月後、2か月後と月日が経過するごとに、徐々に徐々に元気がなくなっていきました。

 「何かあったかな」
 そう感じた私は、A氏が休憩している時に声をかけてみました。「最近どう?」
 大体上司にこんな声をかけられたら「いえ、大丈夫ですよ」と答えるのが部下の常(笑)。

 そこで私は、注水の前に漏水を止めるでご紹介した傾聴と質問のスキル、特にこの場では傾聴のスキルを使って、ひたすら話を聞くことにしました。沈黙も含め1時間ほど経った時、A氏はこんなことを語り出しました。

 以前の店舗は小規模で客数も少なかった。だから入店した車を見ればどんなお客様が運転しているかが即、思い出せるし、前回何を買ってくれたか、何を勧めてどういう反応だったかも即、思い出せた。そして、その情報に基づいてどんな商品をお勧めすれば買ってくれるかが明確になり、それに基づいた接客ができた。ところが今の店舗では、客数が多すぎる。誰に何を勧めていいのかが分からない。

 言われてみればもっともな話です。そこで、私はA氏に聞いてみました。「ガソリン以外の商品ってたくさんあるけど、君が一番得意とする商品は何?」この質問にA氏は「タイヤです」と答えました。
 「じゃ、今からタイヤだけを販売してくれる?それ以外の商品は一切売らなくていい。その人に最適な商品を勧めるのではなく、タイヤが必要な人だけにタイヤを勧めてくれる?タイヤの空気圧を点検すればタイヤの減り具合もわかるから、タイヤが必要かどうかがわかるよね。」

 A氏はビックリした顔で「でも、エンジンオイルの販売予算もあるじゃないですか。それだけじゃない、洗車だって車検だって・・・本社に予算未達だと怒られちゃいますよ」

 「うん、でも君が怒られるわけじゃない。店長の私が怒られるだけだから心配は無用。また、エンジンオイルや洗車、車検の販売予算が未達でも、未達分をタイヤで稼げていれば店舗全体の販売予算は達成できる。そうしたらそもそも怒られないから」
 
 このような私の発言を受けて、A氏はタイヤ販売に猛進しました。私は、タイヤ販売で実績を出したA氏にアルバイトスタッフにもタイヤ販売の仕方を指導するように指示しました。これを機に、当店のタイヤ販売は飛躍的に伸長し、ガソリン以外の商品における収益の大部分をタイヤで稼ぐようになりました。

 余談ですが、当店がタイヤの大量販売を実現させたことで、当店がタイヤを仕入れているタイヤ卸売会社の担当者は昇進を果たし、それ以来、うちの店舗を担当する方は、ほぼ全員が昇進することとなります。また、私が経営コンサルタントに転身するためにガソリンスタンド運営会社を退職する際は、タイヤメーカーが送別会まで開いてくれました。

 戦略の選択と集中も必要ですが、現場レベルでは品ぞろえや販売商品の選択と集中が現場スタッフは販売しやすくなります。ロードサイド店舗は、取扱商品における「選択と集中」の重要性が比較的高い業種なのではないか、と感じています。一般にロードサイド店舗は敷地が広いため、品ぞろえが多く、何を売りたいのか、店舗の色が見えないケースが多いからです。

 ロードサイド店舗を展開する経営者として、現場責任者とともに販売商品の選択と集中を検討する価値は十分にあると思います。

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