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スタッフの戦力化〜OJTという名のほったらかし〜

スタッフの戦力化〜OJTという名のほったらかし〜

 店舗に新人が入社してくると、大体現場の責任者である店長がOJTのトレーナーとして指導に当たります。ガソリンスタンドでいえば、ユニフォームの着こなし・店舗ルールといった基本的なことから、給油作業・窓ふき・精算業務・洗車仕上げといった軽作業をOJTで教えていきます。

 

ところが、店長は現場で責任が一番重いだけに、非常に多忙です。お客様から店長あてに電話がかかってきたり、エンジンオイルやタイヤ交換など新人スタッフではできない作業の依頼があったり、お客様からの質問に答えることができない他のスタッフが「お客様に訊かれたんですけど。。。」と質問に来たり等々。

 

つまり新人スタッフを指導するということは、多忙な店長に「OJTにおけるトレーナー」というさらなる仕事が重くのしかかることを意味します。当然、OJTは円滑に進むわけはなく、新人スタッフにOJTを行っている最中に、店長は他のスタッフやお客様に呼ばれ、新人スタッフは放置される「OJTという名のほったらかし」が起こります。

 

OJTは現場で行われるわけですから、放置されたスタッフは現場で店長が指導に戻ってきてくれるのを不安げに待つしかありません。これが、お客様からすると店内でボーっと立っているスタッフにしか見えないわけです。

店内が混雑していて、何かをスタッフに頼みたくても頼めないお客様は、その「ボーっと立っているスタッフ」は恰好のターゲットになるわけです。

 

「ねぇねぇ、早くガソリン入れ終えてくれないかな」

「洗車をお願いしたいんだけど、どんなメニューがあるのかな?」

「すいません、エンジンオイルの点検してください」

 

こんなことを言われても、つい数時間前にこの店舗で初めてユニフォームを着たばかりですから、何もできません。そこで、先輩スタッフや店長を探してお客様の言葉を伝えようとするのですが、いかんせん、そういう時に限って皆さん忙しいわけで、新人スタッフはオロオロしてしまい、タイミングが悪いとお客様に露骨な不満顔を見せられてしまったりするのです。

 

入社数時間、場合によっては数十分で店舗側からは、ほったらかしにされ、お客様からは不満をぶつけられる新人スタッフ。私の経験上、こういう思いをすると新人スタッフは大きく傷つき、翌日から出社しなくなるケースが多い印象があります。

 ちょっと古いデータですが、左の図は、産業能率大学が実施した調査結果です。これによると9割弱の企業が人材育成の中心的方法としてOJTを挙げていますが、そのOJTが機能していると答えた企業は1割強に過ぎません。

 

私が21年間で勤務した17店舗のガソリンスタンドでも、全ての店舗において能力開発の手法はOJTが中心でした。

 

OJTは「オン・ザ・ジョブトレーニング」の略であり、仕事をしながら従業員の能力開発を行うわけですから、仕事に穴をあけることなく、実践的な能力開発が行いやすい、とされています。

 

これに対して「オフ・ザ・ジョブトレーニング」の略であるOff-JTは、従業員が研修会場などに出向き、外部の専門講師などの研修を受講するため、仕事を離れた分の人件費や外部講師の招聘費用がかかります。そこで、その費用(特に仕事を離れた分の人件費)を最小化するために、オフ・ザ・ジョブトレーニングを実施する際は、研修に参加する従業員の休日をあてがうケースが非常に多かったと思います。ただ、このことが従業員の受講意欲を削ぎ、Off-JTの効果を小さくしてしまうケースが多くなるわけです。

また、能力開発の3つめの手法である自己啓発は、実施できているかどうか、また、効果の測定も困難であることから能力開発の手法としては用いられることが少ない印象があります。

そうすると消去法から、費用の掛からないOJTに傾倒していくことも理解はできます。しかし、前述のような状況を招き、OJTが機能していないこの状況を打開するには、どうしたらいいのでしょうか。

原因が店長の多忙さにあるのなら、店長にトレーナーをさせてはいけません。ではどんな方が適任なのかというと、私はベテランのアルバイトスタッフをお勧めしています。ベテランといっても店舗方針に反抗的だったり、サボってばかりいる人は当然、適任ではありません。現場の最前線にいて、店舗全体に目配りのできる人が適任と考えています。

こういう方がトレーナーをするとどうなるか。いつでも現場にいるのでじっくり手厚く指導をしてくれます。さらに、指導後のフォローアップもしてくれます。いつでも現場にいますから。

OJT中に店舗が混雑してきても、新人スタッフにお客様から声がかかりそうになるとすかさずフォローします。場合によっては事務室や休憩室に避難(?)させることもあります。

 

さらに、トレーナー役であるアルバイト自身の能力開発にもなります。どんなにベテランになっても初めてトレーナーを行うと「いやぁ、教えるのって難しいっすね」と口をそろえたように言います。何でもそうですが、「分かっていること」と「他人が理解できるように説明できること」には大きな違いがあります。

 

新人スタッフの指導を行うことで、店舗運営に必要なスキルを「他人が理解できるように説明できる」ようになり、自分自身の理解も深まります。

 

OJTを有効に機能させるには、トレーナーに相応しい人をトレーナーにすること。つまり適材適所だということなのです。経営者としては、OJTは現場でやるものだから現場に任せきりにせず、有効に機能しているか定期的に店長からヒアリングをして、募集費用やOJTの負荷が無駄になっていないかのチェックをしていく必要があります。

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